情報確認日:2026年5月17日。各コミカライズ版の最終巻までの内容に触れます。
『まおゆう魔王勇者』には5つのコミカライズが同時期に連載を走らせていました。そのうち原作の途中で連載が終わったのは、ファミ通コミッククリアの浅見よう版だけです。メインコミカライズの石田あきら版は全18巻で原作小説(本編全5巻)の結末まで描き切っています。
「全部打ち切られた」という印象が残っている背景には、3つの事情が重なっています。
- 浅見よう版が原作全5巻のうち第2巻終盤、女騎士が窮地に追い込まれる局面で止まっている
- 原作者・橙乃ままれ氏の脱税事件(2015年告発)と時期が重なり、事件で全作品が強制終了したと誤解されている
- 2024年にジャンプで打ち切りになった『魔々勇々』とタイトルが酷似し、検索結果が混ざっている
どれも出版社が罰として止めた話ではなく、事情は作品ごとに異なります。
浅見よう版の最終巻で何が描かれ、何が残されたか
「まおゆうの漫画が打ち切りだ」と語られるとき、その対象はほぼ浅見よう版を指しています。圧倒的な作画で初期から注目を集め、2012年の第2巻発売時には声優・神谷浩史氏が青年商人を演じるボイスカードが同梱されるなど、大きな販促支援を受けていた作品でした。
マスケット銃が出た局面で連載が止まっている
浅見よう版は2016年12月刊行の第8巻で連載を終えています。最終巻で描かれたのは、混戦模様のなか魔王が持ち込んだマスケット銃が戦況を一変させ、窮地に陥った女騎士が最後の手段を講じようとするところまで。原作小説でいえば第2巻『忽鄰塔(クリルタイ)の陰謀』の結末から第3巻『聖鍵遠征軍』に踏み込んだばかりの段階です。
この先には、青年商人が教会の権威を揺るがす暗躍、開門都市での激しい攻防戦、メイド姉による農奴解放の演説が控えていました。原作の骨格をなす場面がまるごと残されたまま、幕が下りています。
原作のこの先を知っていると、ここで止まったことへの惜しさは一段と強くなる気がします。
連載終了の公式な理由は出ていません。ただ、当時のWEBコミック単行本市場では初動売上による継続判断が厳しくなっており、連載が5年近くに及ぶなかでアニメ化ブームも落ち着いていました。石田あきら版が同グループ内で完結に向かっている以上、浅見よう版の連載枠を長く維持する商業的な根拠は薄くなっていたと考えるのが無理のない見方です。
石田あきら版と峠比呂版は最後まで走り切っている
角川コミックス・エースの石田あきら版は、2011年の第1巻から2016年8月の第18巻まで5年かけて原作本編全5巻を完走しています。最終巻の巻末には、原作挿絵を手がけたtoi8氏をはじめ多くのクリエイターから完結を祝うメッセージが寄せられました。メディアミックスの主軸として走り切った証がきちんと残っている作品です。
秋田書店の峠比呂版(全8巻)も2014年11月に完結済みです。魔王の豊かな体型描写や、そばかす顔にコンプレックスを持つ山吹の姫の葛藤が独自色として支持を集めました。外伝の川上泰樹版(シリウスコミックス、全7巻)は原作者書き下ろしプロットに基づく完結作で、4コマの七積ろんち版(全3巻)もコメディとして区切りよく終わっています。
| 作画担当 | レーベル | 巻数 | 完結状況 |
|---|---|---|---|
| 石田あきら | 角川コミックス・エース | 全18巻 | 原作の結末まで完結 |
| 峠比呂 | チャンピオンREDコミックス | 全8巻 | 完結 |
| 浅見よう | ファミ通クリアコミックス | 全8巻 | 原作2巻途中で終了(未完) |
| 川上泰樹 | シリウスコミックス | 全7巻 | 外伝・完結 |
| 七積ろんち | マジキューコミックス | 全3巻 | 4コマ・完結 |
脱税事件のせいで漫画が打ち切られたのか
原作者の橙乃ままれ(本名・梅津大輔)氏と著作権管理会社「m2ladeJAM」は、3年間で得た印税など約1億2000万円を申告せず法人税約3000万円を脱税したとして、2015年4月に東京国税局から告発、同年12月に東京地検特捜部から在宅起訴されています。作中で税や経済の仕組みを熱心に説くキャラクターがいた作品だけに、報道のインパクトは大きいものでした。
事件後も連載は何年も続いていた
「脱税で全部止められた」という見方は、時系列と合いません。事件が報道された2015年4月以降も、石田あきら版は1年以上連載を続けて2016年8月に最終巻を出しています。川上泰樹版の外伝にいたっては事件から約3年後の2018年3月まで通常どおり連載を維持しました。峠比呂版は事件より前の2014年11月に自力で完結しています。
仮に社会的制裁として連載を一斉に止めるなら、報道直後の2015年春にすべてのコミカライズが停止していなければ筋が通りません。実際にはそうなっていません。
浅見よう版が終わった時期と石田あきら版の完結
浅見よう版の最終巻が出たのは2016年12月で、石田あきら版の完結からわずか4か月後です。原作の結末まで描くメインコミカライズが完結した直後に、原作序盤にとどまっている作品の連載枠を維持し続ける商業的な意味は薄くなります。
脱税事件がアニメ展開にブレーキをかけたのは事実です。
『ログ・ホライズン』第3期の放送までには長い年月がかかりました。ただし漫画については、事件を理由に連載が強制終了された痕跡は見当たりません。浅見よう版の終了は、事件の余波というよりも掲載枠整理と売上動向の帰結と見る方が、時系列としては筋が通ります。
よくある疑問
Q. 検索で出てくる『魔々勇々』は同じ作品?
まったく別の作品です。『魔々勇々(ままゆうゆう)』は林快彦氏が週刊少年ジャンプで連載し、2024年4月の第29話で完結(事実上の打ち切り終了)しています。「魔王と勇者」のテーマやタイトルの響きが似ているため検索結果に混ざりやすいですが、出版社も作者も物語もすべて異なります。
Q. 全部のコミカライズが打ち切り?
5作中4作は完結しています。未完のまま止まっているのは浅見よう版の1作だけです。原作の結末まで読みたい場合は石田あきら版(全18巻)で追えます。
Q. 原作小説は完結している?
本編全5巻で完結済みです。石田あきら版はこの5巻分をすべてカバーしており、2016年8月の最終巻刊行をもって原作と同じ結末に到達しています。

