情報確認日:2026年5月19日。原作漫画の結末、2019年版アニメ最終話(第24話)、1969年版アニメ、2007年実写映画の内容に触れます。
2019年版テレビアニメ『どろろ』は、打ち切り作品ではありません。全24話で百鬼丸が12体の鬼神をすべて倒し、身体を取り戻した上でどろろと別々の道を歩む形で予定通り完結しています。2期の制作発表もなく、回収すべきストーリーも残っていません。
ただし「どろろ=打ち切り」という印象が根強いのには、メディアごとに異なる3つの事情があります。
- 原作漫画が手塚治虫の意欲減退と編集部の要請で未完のまま終わっている
- 1969年の初代アニメが視聴率低迷で1年の予定から半年に短縮されている
- 2007年の実写映画が三部作構想の1作目で頓挫している
2019年版だけは事情が違います。最終話で百鬼丸とどろろが再会する場面は、黄金色の田んぼのあぜ道を走るどろろと歩み寄る百鬼丸の数秒のカットだけ。この短さが「まだ続くはずだった」という誤解を生みやすい構造になっています。
百鬼丸の再会が数秒で終わるラスト、なぜ打ち切りに見えるのか
2019年版の完結を疑う声は、ストーリーが途中で切れたからではなく、最終話の描き方に起因しています。
2019年版は全24話、鬼神12体を倒し切って完結した作品
MAPPA・手塚プロダクション共同制作の2019年版は、当初から2クール全24話の構成で設計された作品です。原作の「48体の魔神」を「12体の鬼神」に減らし、24話の中で百鬼丸がすべての身体部位を取り戻すプロットを最初から組んでいたことを、古橋一浩監督が『電撃オンライン』のインタビュー(2019年7月2日公開)で明かしています。
第24話「どろろと百鬼丸」で、百鬼丸は弟・多宝丸との死闘に決着をつけます。多宝丸は自分に取り込んでいた百鬼丸の両眼を自らえぐり出して返し、百鬼丸は全身を取り戻します。その後、実父・醍醐景光を斬らず「人として生きろ」と告げて去り、五感を一気に取り戻した負荷を受け止めるため一人で旅に出ます。どろろは父の遺した財宝で、武士に頼らない国づくりを始めます。
エピローグで描かれるのは、年月を経て成長したどろろが田んぼのあぜ道を走り、旅から戻った百鬼丸と微笑み合うラストカットだけです。初見で第24話まで通して見た直後だと、この数秒の再会で本当に終わりなのかと感じやすい場面だと思います。ただし百鬼丸の旅の目的――奪われた身体を取り戻すこと――は第24話で達成されており、物語としては閉じています。
原作漫画は手塚治虫が急ぎ足で終わらせた未完作品
原作『どろろ』には手塚治虫公式サイトの作品データベースで「(未完)」の表記があります。
講談社『手塚治虫漫画全集』収録のあとがきで、手塚本人が経緯を書いています。水木しげるの妖怪ブームに触発されて連載を始めたものの、物語が暗く生臭い方向に進みすぎて少年誌の読者層と合わなくなったこと、SF漫画『ノーマン』の連載開始で執筆の余裕がなくなったことが重なり、編集部の終了要請を受けて残りの魔物を合成獣「ぬえ」に一括して登場させたと記しています。百鬼丸は48体の魔物を倒し切らないまま旅立ち、物語はそこで途切れました。
この未完の読後感が、50年以上にわたって「どろろ=打ち切り」の印象を持ち越しています。
打ち切られたのは1969年版アニメと実写映画のほう
「打ち切り」が事実として当てはまるのは、2019年版ではなく別のメディアです。
スポンサーの意向で半年に短縮された1969年版
1969年4月から9月にかけてフジテレビ系列で放送された初代アニメ(虫プロダクション制作)は、当初1年間の放送枠を確保していました。しかし日曜19時30分という家族向けの時間帯に、百鬼丸が妖怪の首を撥ねる描写が合わず、スポンサーのカルピスとの間で問題になります。血の色を避けるためにモノクロで制作する対策を取りましたが視聴率は上がらず、全26話で打ち切りになっています。
第14話でタイトルが『どろろと百鬼丸』に改題されたのも、テコ入れの一環です。
この打ち切りに連動して、朝日ソノラマから刊行予定だった辻真先の小説版も前倒しで発売され、原作漫画の連載が終わっていない段階でオリジナルの結末を書く事態になっています。
三部作の1作目で止まった2007年実写映画
妻夫木聡・柴咲コウ主演の実写映画版(2007年公開)は、塩田明彦監督のもと全三部作のロードムービーとして企画されました。ニュージーランドでの大規模ロケを敢行しましたが、続編の制作資金確保が商業的に難しくなったことに加え、キャスト陣の私生活をめぐる複数の外的要因が重なり、2作目以降は実現していません。
| メディア | 期間・話数 | 完結か打ち切りか |
|---|---|---|
| 原作漫画(1967〜1969年) | サンデー→冒険王に移籍後終了 | 未完(手塚本人が認めた打ち切り) |
| 初代アニメ(1969年) | 全26話(当初1年予定) | 視聴率低迷で半年に短縮 |
| 実写映画(2007年) | 1作のみ公開 | 三部作構想が頓挫 |
| 2019年版アニメ | 全24話(2クール) | 予定通り完結 |
「どろろ 2期」という検索はどこから来たのか
2019年版の第2期について、MAPPA、ツインエンジン、手塚プロダクションのいずれからも公式アナウンスは出ていません。百鬼丸は12体の鬼神をすべて倒し、醍醐景光との宿命にも決着をつけた上でどろろの元へ帰っており、続きとして描くストーリーが存在しません。
『ドロヘドロ』との混同と、ネット上の文字起こし誤変換
それでも検索が続く背景には、2つの事情があります。
1つ目は、同じMAPPA制作で名前の響きが似た『ドロヘドロ』との混同です。『ドロヘドロ』は2020年にアニメ第1期が放送され、2024年に続編制作が発表されました。「MAPPAのダークファンタジーに続編」というニュースを見た人が『どろろ』の2期と取り違え、存在しないと知って「なぜ打ち切りなのか」という検索に流れていく構造があります。
2つ目は、YouTubeの解説動画やまとめブログに残る音声文字起こしの誤変換です。辻真先小説版の発売前倒しを語る音声の「売れ行きが落ちる」がまったく無関係な不適切な言葉に変換されたまま放置されたケースや、手塚のあとがき引用が「結局も残った魔物を」→「国金も残った魔物を」のように化けたケースがあり、出所不明の不穏なワードが「裏事情があったのでは」という疑念を膨らませています。
士貴智志によるリメイク漫画『どろろと百鬼丸伝』も、2025年12月19日発売の第13巻で完結しており、シリーズ全体の展開はすべて収束しています。『どろろ』の場合、打ち切りという言葉が当てはまるメディアと、最初から閉じる設計で作られたメディアが混在している点が、誤解の根を深くしています。

